本の感想:ミシェル・ウエルベック 「プラットフォーム」
ウエルベックの「プラットフォーム」を読んだ。
— よろしく太郎 (@kkotobukitaisha) 2022年1月2日
面白いのだが、この次に書かれた「ある島の可能性」と比べると、主人公の欲望に対する批評の踏み込みがヌルい気がする。
プラットフォーム (河出文庫) ミシェル・ウエルベック https://t.co/EiEsmXVga8 @amazonJPより
「ある島の可能性」では主人公の価値観・性的な行動を通じて西洋近代の価値観(個人主義とか)を相対化して無意味なものとして描く。でも、主人公の有り様も後半で無意味なものとして描かれる。
— よろしく太郎 (@kkotobukitaisha) 2022年1月2日
それに対して「プラットフォーム」では主人公の有り様は西洋近代のカウンターとして機能するように描かれる。最終的には暴力によって唐突に終わるけど、それまでは美しいものとして描かれている。
— よろしく太郎 (@kkotobukitaisha) 2022年1月2日
「ある島の可能性」に比べると相対化の視点が徹底していない。
あと、悲劇を演出する手法として女性は暴力を受けたり死んだりするのに、男性はあんまり被害を受けないのも気になる。途中発生する女性のレイプ被害の下りはあんまり効果的には思えないだけに、余計に目立つ。
— よろしく太郎 (@kkotobukitaisha) 2022年1月2日
出版年が2001年なので、当時の受け止め方はもっとセンセーショナルだったのだろうと思うけど。
— よろしく太郎 (@kkotobukitaisha) 2022年1月2日
2022年現在に読むと、露悪的な描写を通じた西洋近代の価値観の批判は、あんまり画期的には見えなくなっている。
刊行された2001年と2022年現在のメディア環境の違いも、この本の感想に大きく影響している気がしてきた。
2001年はインターネットはあったが、ホームページなんかは全く一般的ではなく、市井の人々の意見をフィルタリング無しで読むことは殆どできなかった。テレビや雑誌では良くも悪くも建前が尊重されていた。2022年現在はSNSで露悪的な意見や露骨な「本音」が溢れかえっている。結果的に、刊行当時よりも凡庸に思えてしまうんだろう。