森喜朗問題はマイノリティ排除の問題だ

2021年2月12日現在、森喜朗氏が五輪の実行委員会を辞任するかしないかが大きな話題になっている。事の発端は女性差別発言だったが、あの発言の本質は「男性が女性を差別している」というだけにとどまらない。あれは「意思決定に関与できるインナーサークルのメンバーが、サークルに入っていない人を差別する」という話だ。

森喜朗氏の発言を見ると、女性に対してというより「会議の場で長く発言する人」を「わきまえない人」として捉えていることがわかる。つまり、会議の場では短く発言する、ないし発言しないでいるべきだ、ということだ。ではどこの場で長く話し合っているのか、といえば、おそらく会食等の非公式な場で実質的に物事を決めているのではないだろうか。

森喜朗氏が問題発言をしても辞めさせられないほどの権力を得たのは、この意思決定の仕組みが大きく関係しているだろう。森喜朗氏の評判を様々なネット記事で読むと、実際に会って話したら好感を抱くのだろうな、と思わせるほど評判がいい。閉じた場で人をいい気分にさせ物事をうまく進めていく能力の持ち主は、閉じられたサークルで物事が決まる仕組みととても相性がいい。「森喜朗を通せば、非公式な場で話し合ってくれて物事が進む」となれば森氏に物事を頼むだろうし、頭が上がらない人も増えるだろう。

そして日本のインナーサークルは日本のマジョリティ(日本国籍・両親が日本人・男性・高齢・大卒……)で占められていると考えられる。森喜朗の発言は今回はたまたま女性に対して向けられていた。それは会議の中で女性が目立つ存在だったからだろう(女性か男性かは見た目で判断可能な場合がほとんどだ)。ただ、発言の矛先は女性ではなく意思決定のインナーサークルに入れないマイノリティ一般に向けられている、と考えるのが妥当だと思う。「女性はわきまえない」だけじゃなくて「外国人は」「外国籍は」「ハーフは」「若者は」「低学歴は」……色んな属性の人達が、意思決定に参加することから排除されうるということだ。

今回の件は、日本の組織の意思決定から、マイノリティが除外されてしまっている、いい例になっているように思う。そしてそれは五輪の組織委員会だけでなく、多くの企業にも当てはまることではないだろうか。