AI人材の育成よりもAI人材が活躍する環境整備が大事

政府、AI人材年25万人育成へ 全大学生に初級教育:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42932250W9A320C1SHA000/

 

このところ、「AI人材」を育てよう、という目的の政府主導の取り組みをよく見る。報道を見る限りAI人材というのはプログラミングを通じて機械学習アルゴリズムなどを作成したり活用したりできるスキルを持った人、という感じだ。

もちろん、AIを使って社会を豊かにしていくためには、今後このようなAI人材は一定数必要になるだろう。しかし、AI人材が活躍するためには周囲の環境を整えることの方がよほど大事なのでは?と思う。

例えば、AIを有効に使うためには「AIを使ってなんかいい感じにしてくれ」というような丸投げな関わり方ではなく「この問題を解決するためにAIによるデータ分析の結果を活用しよう」と具体的に考える上司(などの意思決定する人)が必要になるだろう。あるいは、機械学習アルゴリズムなどにとって一次データの質がとても重要であることを理解し、データの精度向上や収集に協力してくれる関係者も必要になるかもしれない。AI人材が単体でいればうまくいくのではなく、組織全体でAIに関するリテラシーが向上することで、初めてAI人材も活躍できる。逆に、そういったリテラシーが低い組織に「AI人材」を入れたところで、彼らが価値を発揮することは難しいだろう。

日経新聞を読んでいると、様々な問題が語られたあとで「AIの活用によって解決を図る」といった意味の文章をよく見る。あたかもAIを導入すれば自動的に問題解決されるような書き方に感じる。そんな魔法の杖のような「AI」を期待して「AI人材を育成する」と言っているのであれば、都合が良すぎる発想だ。管理職や直接AIの設計に携わらないスタッフ含め、問題解決の一ツールとしてAIをとらえ、組織的にリテラシーを上げる取り組みを行わなればAI人材は活用できずに終わるだろう。