Jリーグの改革はどのように進めるべきか

Jリーグの改革案についての議論が現在多く繰り広げられている。代表的なものは秋春制で(ここここを参考にして欲しい)15日にはかつて行われていた2リーグ制にする動きがある、とも報じられた(このまとめがわかりやすい)。

現在Jリーグは観客の平均動員数の減少に悩んでいます。J1では、震災の影響が大きい2011年はともかく、2012年の平均入場者数は17566人と2010年シーズンの平均入場者数18428人を下回っています。また、主力選手の海外リーグへの流出などの問題を鑑みてリーグの根本的改革を議論しているのでしょう。

 

私個人としては秋春制も2リーグ制も反対です。なぜか、それはJリーグの理念に反しているからです。

 

Jリーグには「Jリーグ百年構想」という指針があります。これは1996年にJリーグが定めたもので

「あなたの町に、緑の芝生におおわれた広場やスポーツ施設をつくること」

「サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること」

「「見る」「する」「参加する」。スポーツを通して世代を超えた触れ合いの輪を広げること」

という3つの指針からなっています。そして「地域に根ざしたスポーツクラブ」を広げることが大事である、ということが語られています。

仮にJリーグが制度変えるのであれば、変更は「百年構想の実現に近づけるかどうか」という基準で議論されるべきだと思います。

 

春秋制が問題なのは、冬にサッカーを行うことで地域に根ざしたスポーツクラブを作ることが難しくなってしまうからです。

現在Jリーグは20年が経ったとはいえ、まだまだ一般の認知度やコミットメントは低いでしょう。地域に根ざしたスポーツクラブのためにはさらなる浸透や新規のサポーター獲得が必要なはずです。そして日本の多くの地域の多くが冬季に積雪のある、ということは事実です。つまり、冬季に雪が降っているような環境で、いかにサポーターになってもらうか、を真剣に考えなくてはならないわけです。しかし秋春制に移行して冬にサッカーを行えばその可能性は著しく減ってしまうのではないでしょうか。サッカーにさほど詳しくない新規のお客さんが雪降る寒さの中何時間もベンチに座ってサッカー観戦を行なって、また来たいと思えるでしょうか?僕はムリだと思います。サッカーを行うインフラの問題の前に、人が増えない。このようなことで百年構想を実現することは出来るのでしょうか?地域の人達に愛されるようなクラブになるのでしょうか?難しいでしょう。

 

2リーグ制も「地域に根ざしたスポーツクラブを作る」という観点から見た場合疑問点が多い制度です。優勝の仕組みがわかりづらくなる上、序盤で優勝の可能性が消えてしまう可能性が高いからです(シーズンの試合数が少ないため)。また、リーグ優勝決定戦であるチャンピオンシップのテレビの視聴率が高いことが2リーグ制復活の一因とされていますが、視聴率が高いことが地域に根ざしたスポーツクラブの実現の指標になっているのでしょうか?むしろ地域と離れた人たちを対象としてお祭りとしての人気度の視聴なのではないでしょうか? Jリーグの人気が全国的に盛り上がれば結果的に視聴率が上がることもありうるでしょうか、一番の指標にすべきはスタジアムの席の埋まり具合や年間入場者数等だと思います。年間入場者数の平均が最高だった2008年が1リーグ制だったことを考えると、支持できません。


近年の改革の議論は「視聴率を伸ばす」「海外と時期を合わせて代表のスケジュールを組みやすくする」など、近視眼的な議論がなされることが多いように思います。しかし、Jリーグは百年構想という確固とした指針を持っているのですから、それを基準に制度や施策を考えていくべきです。

代表の国際的な成績と国内リーグの人気は比例しません。フランスは1998年のワールドカップで優勝しました。しかし、フランスの国内リーグであるリーグ・アンパリ・サンジェルマンの投資が行われるまで盛り上がりは今ひとつでした。現在世界のサッカーリーグの中で最多の動員を誇るのはドイツのブンデスリーガですが、ドイツがワールドカップやEUROなどの国際大会で優勝したのは2006年が最後です。人気の高いプレミアリーグがあるイングランドに至っては1966年です。百年構想は「強い日本代表を作る」という目標ではなく「地域に根ざしたスポーツクラブを作る」というものなのですから、リーグの活性化についてまずは考えて欲しいと思います。


百年構想を実現させるためには、「地域の人が地域のスポーツクラブのサポーターになってもらう」という方法しかありません。それを実現するために様々な施策を考えて欲しいと思います。